「栃木押印伝道師」の愛称でも知られている通り、バースの中に韻を散りばめるスタイルがウリの実力派ラッパーSAM(舟平)。
相手のラップに対する的確なアンサーをしながら韻を踏みまくる高いラップスキルが特徴的なSAMですが、楽曲ではスタイルを一変させ、哀愁漂う人間味のあるラップでヘッズ達の人気を集めています。
端正な顔立ちやスタイリッシュなファッションで女性ヘッズ達からの人気が高いことに加え、数々のバトル大会を制してきました。
しかし、その成功の裏側にある苦悩や葛藤を知る人は少ないのではないでしょうか。SAMの経歴を知り、彼の曲に込められた思いや経歴を紐解くことでHIP-HOPをもっと楽しめることは間違いなしですよね。それでは早速 Check it out!
「SAMは〇〇という困難を、△△で乗り越えた」
ラッパーSAMのプロフィール
アーティスト名 | SAM(舟平) |
本名 | 三浦 舟平(みうら しゅうへい) |
年齢 | 29歳(1994年11月15日 生まれ) |
身長 | 173㎝ |
出身地 | 埼玉県所沢市 |
拠点(レペゼン) | 栃木県宇都宮市 |
学歴 | 中卒 |
所属レーベル | Per Life |
栃木県宇都宮市レペゼンの印象が強いSAMですが、実際に生まれたのは埼玉県所沢市だそうです。
とはいえラップを始めたのは栃木県に住み始めてからのため「SAMの出身地は栃木県です」と語っています。
SAMのラップスタイル
SAMのラップスタイルの特徴は何と言っても淡々と韻を踏みまくるライムスキルの高さ。
熱さに身を任せ、バイブスの高さだけでバトルを突破することは少ないですが、淡々としたラップの中に確かな情熱を感じることもできる熱い一面も持ったラッパーです。
SAMの名前の由来
SAMは本名である「三浦舟平」のイニシャル「S.M」の間に「A」を足し、繋げて呼んだことに由来するとインタビューで語っています。
元々サイファーなどフリースタイルでラップをすることはあったようですが、栃木県を拠点に活動するMastaQuenchのマチネと知り合いライブをするようになって以降、あいまいだったMCネームを決めようと思い、2015年の夏ごろからSAMと名乗り始めたそうです。
ホームレスから始まるSAMの人生
埼玉県所沢市に生まれる
般若のラップを聞き、HIPHOPに興味を持ち始める
高校受験の期間中、他校の生徒と喧嘩をして捕まり、受験を受けられず働く決意をする
建設系の会社に就職
CIMAのラップを聞きバトルを見始める
働いていた会社にいた先輩の影響でバトルをし始める
親に迷惑をかけていた自分を変えたいと思い、5000円だけ持って1人栃木へ移住
廃品回収のバイト等をこなしながら駅のホームで夜を明かす生活を送る
MastaQuenchのマチネと知り合い、ラッパーとしてライブに出演し始める
MCバトルに数多く参戦し、様々なタイトルを獲得
2022年2月舟平に改名し、楽曲制作に集中するため1年間バトルへの出場を休止すると発表
2023年3月、両国国技館にておこなわれた戦極29章でバトル復帰
埼玉県所沢市に生まれる
栃木県レぺゼンの印象が強いSAMですが、実際に生まれたのは埼玉県の所沢市です。
SAMは演歌歌手でもある三浦慎也さんと、フィリピン人の母親との間に生まれます。
父親は実家の押入れの中で作詞作曲をおこなっていたそうで、日常生活の中に音楽は付き物だったと話しています。
喧嘩で捕まり受験ができず、中学卒業と共に就職
中学校時代にHIPHOPの事を知り、般若の楽曲を多く聞いていたというSAM。
しかし中学の受験シーズンに他校の生徒と喧嘩をしてしまい、一時捕まってしまいます。
そのため、高校受験をすることができず、就職せざるを得なかったそうです。SAMは中学卒業後、地元の建築会社に就職して社会人としての生活をスタートさせます。
1人生まれた街を離れ栃木へ移住しホームレス生活を送る
地元で社会人としての生活をスタートさせたSAMですが「父親に迷惑をかけたくない。自分を変えたい!」という思いから、5000円を握りしめて1人栃木に移住します。
栃木に移住してしばらくの間、昼は廃品回収業者の助手席に座りながらバイトをし、夜は作業着を着こんで駅の中で朝を待つというホームレス生活を送っていました。
栃木の様々な街を転々としていたSAMですが、駅の路線図で宇都宮の文字を見かけ「聞いたことがある」という理由から宇都宮に向かうことを決めたそうです。
栃木県宇都宮市に移住し、マチネと出会う
元々働いていた会社でフリースタイルをしていた人がいたというきっかけもあり、サイファーなどへの参加経験があったというSAM。
初めて衝撃を受けたのはUMB2011の神戸代表CIMAのY.A.S戦だったそうです。
SAMは気の向くままに移住してきた栃木県宇都宮市という街で、宇都宮を拠点として活動するMastaQuenchのラッパーマチネと出合います。
マチネは宮サイファーというサイファーも主催しており、栃木県を語る上では外せないラッパーの1人です。
マチネから認められたSAMはライブへの参加を提案され、徐々にラッパーとしての活動を本格化させていきます。
この頃、ライブへの参加をするにあたり、あいまいだったMCネームをSAMにすることを決意したと後のインタビューで語っています。
数々のMCバトルに参戦し、ヘッズたちからのプロップスを集める
ラッパーとしての活動を本格化させたSAMは、その実力をいかんなく発揮し、瞬く間にそのプロップスを高めていきました。
SAMの名が全国のヘッズに知れ渡るきっかけになったのが、同じ宮サイファーのライバルであり親友でもあるMAKAと共に出場した戦極MCバトル14章×As ONEの2on2バトルです。
この大会でSAMとMAKAは「栃木2000万パワーズ」として出場し、崇勲とCHICO CARLITの2人で構成された「四筒七筒両面ズ」との戦いで大会屈指のベストバウトを演じます。
確かなスキルと、最高峰の押印スキルを併せ持つSAMのラップはあっという間にヘッズ達の心を掴み、大規模MCバトル大会からオファーが殺到する人気ラッパーになっていきます。
MCバトルでタイトルを獲得するも、1年間のバトル参加休止を発表
2017年におこなわれた戦極16章で準優勝、全国最高のラッパーを決めるためのUMB2018でBEST8と着実に経験を積んでいったSAMの実力は2019年頃にいっきに開花します。
まずは3月におこなわれた戦極19章の3on3大会でID、MU-TONと組んだチームで優勝し、初のビッグタイトルを手にすると、続けて戦極20章でも立て続けに優勝。
その後も凱旋MCバトルや戦極MCバトルなどの大規模大会で優勝を経験していたSAMですが、2022年2月に突如MCバトルへの参戦を1年間休止すると発表し、全国のヘッズ達を騒がせました。
同時にSAMはMCネームを舟平に改名し、今後の活動を楽曲制作に集中させると発表。
以後1年以上の間バトルへの参加はありませんでしたが、2023年3月に両国国技館でおこなわれた戦極29章にSAM名義でのバトル復帰が発表されました。
SAMのベストバウトは?
SAMのpucho henza編集部の一押しバトルを紹介していきます。
①KING OF KINGS vs 真 ADRENALINE SAM vs SKRYU
ベストバウトが連発し、過去最高との呼び声も高い大会からSKRYUと演じたピースな雰囲気の名勝負です。
「バックパックからはみ出した不確かな才能をひっさげここまで来た」とSKRYUの楽曲「Mountain View」のサンプリングでラップを始めたSAMに対し「始めようぜ、小洒落たParty Night」とSAMのパンチラインのサンプリング返しをするSKRYUも最高のバトルです。
②戦極MCBATTLE 第22章 SAM vs MU-TON
共にチームを組んだこともある親友のMU-TONと本音で対話しあう姿勢がカッコいいおススメバトルです。
「俺は箔が落ちてきた」「拍の取り方が上手いな」「把握してる」「歯食いしばって生きてきた」と「はく」の2文字を繋げながらラップをするSAMらしいラップがカッコ良すぎます。
③UMB2018 GRAND CHAMPIONSHIP SAM vs EVOL
ラッパーとしての生まれの街、栃木県の代表として参戦したSAMの覚悟が伝わってくるバトルです。
「最近の流行り、まるでIQOSやIH、火の付かねえMCに俺は興味無し」と洒落たワードで相手をディスりながらも「レぺゼン、そいつを舐めんじゃねえ。レペゼンは重荷じゃねえ、想いだぜ」と栃木を背負う覚悟を語るSAMの姿勢が最高にカッコいいです。
SAMの人気曲は?
SAMの人気曲と、pucho henza編集部の一押し曲を紹介していきます。
SAMの人気曲①「namida」
センチメンタルなビートに乗せるSAMの歌声と、幼少期からの苦悩を語ったリアルなリリックが心に刺さるSAMの人気曲です。
SAMに興味を持った方はぜひ歌詞を見ながら聞いて欲しい1曲です。
SAMの人気曲②「なんとかなる feat.般若」
中学生時代から影響を受けていたという憧れのラッパー般若を客演に迎えた1曲です。
”相変わらず仲間はバッツを巻く。でも俺は変わらずにジャンプを買う”という等身大のリリックがSAMらしいですよね。
編集部おすすめ曲「Wind Breaker [prod by Fooly&Cooly]」
シンプルで幻想的なトラックに、シンプルでスキルの高いSAMのラップが聞き心地バツグンの1曲です。
”俺もお前も血は赤い、なら多分そんなには違わない”というリリックセンスがめちゃくちゃカッコいいですよね。
SAMと仲のいいラッパー
若い頃にやんちゃをしていたことが想像できないほど落ち着いた雰囲気で人当たりも良いSAMには数多くのラッパー仲間がいることでも知られています。
今回はその中でも特にSAMと仲の良いラッパーを2人に絞って紹介していこうと思います。
MAKA
同じく栃木の宮サイファーに所属し、ライバルとしてSAMとしのぎを削ってきたというMAKAはSAMの大親友の1人です。
「栃木2000万パワーズ」として戦極14章に出場したSAMとMAKAですが、2023年7月におこなわれた戦極30章では同じく栃木レペゼンのラッパーDOTAMAを加え「栃木9900万パワーズ」として出場し、見事に優勝を飾っています。
ID
SAMと同じく1994年生まれのIDは同世代のMU-TONと共にチームを組んで戦極MCバトルに参戦し優勝するなどしており、SAMと仲の良いラッパーとして知られています。
SAMはIDに対してバトル中に”愛してるぜ”とリスペクトの気持ちを伝えたり「マイメン」と表現したりするなどしたこともある程です。
気になるSAMのアレコレ
ここまでは人気と実力を兼ね備えた栃木の押印伝道師ことSAMの経歴、さらにはおススメの曲やバトルに紹介をしてきました。
ここからはSAMのファッションなど気になるアレコレについて、さらに深掘った情報を紹介していこうと思います。
SAMのファッション
ゴリゴリのB-BOYといった雰囲気とはほど遠く、どちらかと言えばシンプルでカジュアルな服を着こなしていることが多いのがSAMのファッションの特徴です。
ユニクロやGUの服でコーディネートをまとめる日もあるようですが、スタイルの良さと甘いマスクのせいもあってとてもオシャレですよね。
ちなみにSAMが所属するPer Lifeではアパレルブランドも展開しており、SAMもモデルとして活躍しています。
SAMのタトゥーに込められた意味
両腕に船のイカリや羅針盤のタトゥーが彫られているSAM。
彼はそのタトゥーに込められた意味について”僕の名前が舟平で、親父が舟(フネ)のようにのんびり平和に育つように、と言う意味で名付けてくれて最高に気に入っている名前なので舟にちなんだ羅針盤、いかり、舵を彫ってます”と投稿しています。
とても素敵なエピソードですよね。
SAMのこれからの野望とは?
数々のタイトル獲得はもちろん、ヘッズからの人気も高くラッパーとして大成功しているといってもいいSAM。彼は今後、どのような夢を持ちラッパーとしての活動を続けていこうと思っているのでしょうか。
ここからは、SAMのこれからの野望について紹介していきたいと思います。
日本武道館でワンマンライブをしたい
SAMはTwitterの投稿でバトルの参戦休止を発表した際に「僕はいつか武道館でワンマンをできるような男になりたいです」とコメントを残しています。
バトルMCとして大きな会場に何度となく立ってきたSAMですが、やはり1人のラッパーとして大きな会場でワンマンライブをしたいという想いは強いようです。
バトルだけでなく、楽曲の評価も高いSAMですから、この野望も近いうちに達成されるかもしれませんね。
楽しみながら勝ちたい
SAMはバトル中によく「楽しみたいし勝ちたい」というニュアンスのラップをすることが多いラッパーでもあります。
その真意について2019年におこなわれたUMB 2019 THE CHOICE IS YOURSのD.D.S戦で”嫌な思いしてまでMICで売れたらサラリーマンと変わらねえ”と自信の思いをスピットしています。
その言葉通り、相手のラップを楽しみながらバトルをする場面も多いSAMはまさに「楽しみながら勝つ」を体現しているラッパーでしょう。
ラッパーSAMまとめ
「SAMは元ホームレスという困難を、最高峰のライミングスキルで乗り越えた。」
学生時代からやんちゃを繰り返し、高校に入学することすらできないばかりか、一時はホームレスのような生活を送っていたというラッパーのSAM。
そんなSAMが5000円を握りしめ1人向かった栃木県でHIPHOPと出会ったことで、彼の人生は一変しました。数多くのバトル大会でタイトルを獲得し、シーンでもトップクラスの人気ラッパーに数えられるほどのラッパーに成長したSAM。
SAMの経歴、バトルや曲のリリックに込められた思いを知ったことで、みなさんもSAMのことがさらに好きになったのではないでしょうか。
皆さんも武道館でワンマンをしたいという野望を持つSAMの活躍を楽しみにしながら、HIPHOPを楽しんでいきましょう。