等身大のリアルを硬すぎる韻で綴ったリリックで、多くのリスナーを魅了してきたラッパーZORN。
地元葛飾、新小岩をレペゼンし、3児の父親として家族をラップする姿にたくさんの人が共感しています。
2019年の独立以降は、日本武道館・横浜アリーナ・さいたまスーパーアリーナで単独ライブを開催しており、今やシーンを代表するラッパーの1人です。また、最近は地上波でもラップを披露するなど、HIPHOPファンのみならず幅広い層から支持を受けています。
そんなZORNはどのような生い立ちを経て、今に至ったのでしょうか。この記事を読めばZORNのラップを今まで以上に楽しく聞けること間違いなしです。
「ZORNは壮絶な〇〇と向き合い、△△を掴んだ。」
ZORNのプロフィール
アーティスト名 | ZORN |
本名 | 杉山 雄基 |
年齢 | 34歳(1989年2月16日生まれ) |
身長 | 推定168cm |
出身地 | 東京都葛飾区新小岩 |
拠点(レペゼン) | – |
学歴 | 高校中退 |
所属レーベル | 自主レーベル |
ZORNのラップスタイル
等身大のリアルな生活・日常を全面に打ち出したラップがZORNのスタイルです。
金・高級車・非合法といったいわゆるHIPHOP的な内容ではなく、職人仕事(社会人)や子育てといった一般的なトピックスで構成されるので、多くの共感を呼んでいます。
また、複雑かつ意味が通った完璧なライミングこそがZORNの真骨頂で、数々のラッパーから称賛を受けています。
ZORNの名前の由来
ZORNというラッパー名は、2010年代に活躍した代表曲「secret base〜君がくれたもの〜」で有名なガールズバンド「ZONE」が好きだったことに由来しています。
中学生の時に好きだったZONEに、ラッパーで有名になればメンバーに会えるかもしれないと思って付けたようです。
また、活動初期は「ZORN THE DARKNESS」名義で、昭和レコード加入をきっかけに「ZORN」に改名しました。
壮絶な家庭の事情から始まるZORNの人生
・東京都葛飾区新小岩市で生まれ育つ。
・中学の時にTHA BLUE HERBやキングギドラを聴きHIPHOPにハマっていく。
・下町を中心としたMCバトルで頭角を現し無類の強さを誇る。
・高校に進学するも中退し、その後逮捕され18.19歳の2年間を少年院で過ごす。
・UMB2008ベスト4などMCバトルで結果を出す。
・2009年に自主制作で1stアルバム「心象スケッチ」をリリース。
・2014年に般若(当時)が率いるレーベル「昭和レコード」に加入。
・2019年に昭和レコードからの脱退を発表。
・2020年に脱退後初の9thアルバム「新小岩」をリリース。
・2021年に武道館と横浜アリーナ、2022年にさいたまスーパーアリーナで単独ライブ開催。
壮絶な家庭の環境のもと不良の道に進んだ少年時代
東京の下町新小岩で生まれ育ったZORNの少年時代は荒れていました。
楽曲「家庭の事情」などで詳細に描かれていますが、その内容は想像を絶するものです。
不良の道を突き進み、高校に進学するも1年を経たない内に中退しており、マリファナなどたくさんの悪いことをしたと語っています。
さらに18歳の時には逮捕され、2年間少年院で過ごしています。
数々のMCバトルで実績を残し1stアルバム「心象スケッチ」をリリース
このままではいけないと少年院で感じたZORNは、更生の道を歩み始め、少年院内の作文コンクールで最優秀賞を受賞し主席で卒業。
出所後は本格的にラッパーの活動に力を入れ、THE罵倒の3連覇・UMB2008ベスト4などMCバトルで結果を出します。
確かな実力をシーンで示すと2009年には自主制作で1stアルバム「心象スケッチ」をリリース。
このアルバムは1,000枚限定で作られたため、あっという間に完売し、現在でも希少価値が高い商品になっています。
昭和レコードに加入・日本を代表するラッパーへ
元々交流のあった般若から誘われ、2014年にレーベル「昭和レコード」に般若・SHINGO★西成に続く第3の男として加入。
MC名も「ZORN THE DARKNESS」から「ZORN」に改名します。
4thアルバム「サードチルドレン」から8thアルバム「LOVE」に加え、ミニアルバムや3人名義のアルバム「MAX」のリリースなど精力的に活動。
特に2015年にリリースした5thアルバム「The Downtown」の「My life」は多くの共感を呼び、ZORNは日本を代表するラッパーに名を連ねました。
30歳で独立を発表し新たな挑戦へ
ZORN は30歳になる年の2019年のライブで昭和レコードからの脱退を発表します。
新しいことをしたいという前向きな理由で、般若とSHINGO★西成からも背中を押される円満なものでした。
脱退後は、9thアルバム「新小岩」・10thアルバム「RAP」のリリースに加えて、KREVAやRADWIMPSとの共演など幅を広げて活躍。
脱退の発表と同時に「武道館でまた3人でライブする」と宣言し、2021年に見事実現、さらに横浜アリーナ・さいたまスーパーアリーナと立て続けに大舞台でライブも行っています。
また、2021年には音楽に集中するためにラッパーと並行していた塗装工の仕事を辞めたことを明かし、生活面でも次のステージに進みました。
ZORNの人気曲は?
ZORNの人気曲と、pucho henza編集部の一押し曲を紹介していきます。
ZORNの人気曲①「My life」
ありのままの日常をラップしたZORNの原点にして頂点とも言える代表曲。
「洗濯物干すのもHIPHOP」のパンチラインには、多くのリスナーが心を掴まれました。
ZORNの人気曲②「家庭の事情」
名プロデューサーBACHLOGIC担当し、ZORNの壮絶な生い立ちがリアルに綴られた曲です。
アコースティックギターを基調としたトラックが曲を引き立たせています。
ZORNの人気曲③「いたいのとんでけ」
友人のDJに向けられたメッセージ性の強い曲ながら、ライミングがばっちり決まっていてまさにZORNにしか書けない内容です。
一つひとつのリリックが優しく元気をもらえるような不思議な力を放っています。
編集部おすすめ曲「般若/ZORN/SHINGO★西成 / ヤメラレナイ」
3人が昭和レコードに所属していたときの楽曲です。
「ヤメラレナイ」という言葉が耳に残る、中毒性が高く言葉にできないクセがあります。
ZORNと仲のいいラッパー
ZORNと仲の良い2人のラッパーを紹介します。
AKLO
ZORNとAKLOは数々の楽曲で共演している他、ツーマンライブも行うなど非常に良好な関係で有名です。
ZORNの方が後輩にあたるものの2人はタメ語で話しており、友人のような距離感で付き合っています。
AKLOのスタジオにも頻繫に通い、HIPHOP以外にもプライベートの近況も話題に入れるなど、公私に渡り欠かせない存在と言っても良いでしょう。
KREVA
ZORNの尊敬するラッパーの1人がKREVAです。
今ではKREVAからスキルを認められ、楽曲共演など同じ舞台で活躍しています。
また、2023年に日本のHIPHOPシーンの話題をさらったKREVAとMACHHOの共演の架け橋となったのがZORN。
2人の間に入るだけでなく全体のプロデュースにも関わっていて、大物からの信頼の厚さが伺えます。
気になるZORNのアレコレ
気になるZORNのアレコレについて紹介します。
ZORNのファッション
大人らしさを感じさせるシンプルで洗練された印象を与えるのがZORNのファッションの特徴です。
比較的ストリートなコーディネートを好み、下記のようなブランドを愛用しています。
・VANS
・THE NORTH FACE
・Supreme
・WTAPS
・KARL KANI
また、首元に光輝くchrome heartsのネックレスが存在感を際立たせています。
日本武道館を出禁になったZORN
ZORNは2021年1月に武道館で悲願のワンマンライブを開催しました。
昭和レコードで苦楽を共にした般若・SHINGO★西成と一緒にステージに立ち、数々の豪華なラッパーが登場し大盛況で幕を閉じます。
また、翌年の2022年にリリースしたアルバム「Rap」で、「武道館出禁になるのもHIPHOP」というリリックが話題に。
このリリックについてはさまざまな憶測が噂された中で、さいたまスーパーアリーナでの単独ライブ時にZORN自ら説明。
結論を言うと、地元の友人約50名を許可無しにステージに上げたため、武道館側から出禁を言い渡されたとのことです。
しかし、これに懲りずさいたまスーパーアリーナのライブでも同様に友人や子供と共にステージに上がった姿がSNSなどで反響を呼びました。
ZORNのこれからの野望とは?
過去のインタビューで思い描く展望について聞かれたZORNはこのように語っています。
“世代やジャンルを超えた挑戦をしていきたいなと思いますね。せっかく音楽をやっているので、それをもって世代やジャンルを超えた挑戦をしていきたいなと思いますね。その中できちんと僕らしい生活に根付いた歌を届けながら、それでいてカッコいいって思われる音楽、HIPHOPを追求していきたいです。”
LACOSTE Portraits of the creator vol.4 ラッパー ZORN
この言葉の通り、BOSS THE MCやAK-69などの先輩ラッパーから他ジャンルのRADWIMPSなど、さまざまアーティストと共演をしてきました。
また、近年は地上波に出演することも増えており、着実にZORNのHIPHOPが根付いていると言えるでしょう。
ラッパーZORNまとめ
「ZORNは壮絶な家庭の事情と向き合い、まともではない人生を掴んだ。」
ZORNの人生経験を持ちながら「危ねえ 危うくまともな人生」というリリックを書けるラッパーはあまりいないはずです。
現在に至るまでにさまざまな想像をし難い苦悩・葛藤があったと思いますが、それらを美化することも繕うこともなく真っ直ぐに表現しています。
そして、意味を通し続けながらも固い韻を踏み倒しているところが、ZORNのすごさと言えるでしょう。
さらなるZORNの活躍に今後も目が離せません!